「地元学をはじめよう」(吉本哲郎)

「ふるさと教育」の改善のヒントが詰まっている

「地元学をはじめよう」
(吉本哲郎)岩波ジュニア新書

「地元学」というと
聞き慣れないかも知れません。
しかし、現在小中学校で取り組んでいる
(取り組んでいるのは圧倒的に
過疎県ではあるが)「ふるさと教育」が、
まさにそれに当たると考えます。

しかしこの「ふるさと教育」は、
必ずしもうまくいっているとは
言えません。
ふるさとを愛する心を養う目的で
実施されているものの、
ふるさとの「良さ」以上に「不便さ」が、
活動をしていくほど
どうしても際立ってしまうのです。
「良さ」に気づかせようと、
教師は様々な工夫や仕掛けを
試みているのですが、
理解力のある子どもほど
ふるさとの「不便さ」「物足りなさ」
「魅力の乏しさ」に気付いてしまい、
ふるさとを離れて大学進学し、
都会に就職してしまうという
「逆効果」の方が目立っている始末です。

そうした現状を考えたとき、
本書には改善のためのヒントが
たくさん詰まっていると考えます。

一つは「ないものねだり」ではなく
「あるもの探し」という視点です。
「ないもの」に拘るのではなく、
地域に「あるもの」を組み合わせて
新しい価値を創り出すという
考え方です。
一流の料理人は冷蔵庫を開けて、
そこにあるもので
料理を組み立てるといいます。
それと同じように、地域の扉を開けて、
「あれもない、これもない」と嘆くのは
二流であり、あるものを使って
地域興しをしていくのが
一流であるという発想なのです。

一つは「土の地元学」と「風の地元学」の
組み合わせという視点です。
「土の地元学」は
地元に人たちによる地域発見、
「風の地域学」は
外の人たちによる「地域の持つ力」
「地域の人材の持つ力」の発見と
それらを引き出すはたらきのことです。
地元の人間では気づけないことを、
外の人たちの助けを借りて再発見し、
引き出していくことが
大切なのだといいます。

そして一つは「発表すること」が
大切であるという視点です。
地元学によって調べたことを
どう発信していくかが鍵を握るのです。
「発表すること」は、
外に対してのPRになるとともに、
地域をしっかりと結びつける
接着剤としての機能も果たすのです。

こうしたことを取り入れていったなら、
「ふるさと教育」ももっと面白いもの、
有意義なもの、
本来の効果が期待できるものに
なるのではないかと思います。
子どもたちが失望するのではなく、
「やっぱり地元はいいね」と
言えるような「ふるさと教育」を
目指したいと考える今日この頃です。

(2019.6.10)

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